エマニュエル・トッド(Emanuel Todd)著・第三次世界大戦はもう始まっている・文春新書を読んでみた①

トッド氏の本、第三次世界大戦はもう始まっているを店頭でみて買ってみた

第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書 1367) | エマニュエル・トッド, 大野 舞 |本 | 通販 | Amazon

トッド氏の指摘はまさに天才的と言わざるを得ない

以下に抜粋する

 ・ロシアの残忍さを糾弾し、プーチンと”その取り巻き”を「戦争犯罪人」と名指しすることから見えるのは、実はヨーロッパ人たちの無力感です。こうする意外に何もできないゆえに、「ロシアを悪とみなす」ことで、西欧の各国政府は、自分たちの無力さと卑劣さを隠そうとしているのです。しかも、このような反応が、戦争をさらに深刻化させ、和平を困難にすることにすら気づいていません。P59

 ・アメリカではとにかく裁判が多く、企業活動でも法的手続きが膨大にあります。そこで弁護士が手にする膨大な報酬も「GDP」に含まれます。(中略)アメリカは、いわば「幻想の経済大国」です。P67

 ・要するに、ヨーロッパとロシアの接近、日本とロシアの接近――ユーラシアの再統一――は、アメリカの戦略的利益に反するのです。そこで平和的関係が築かれてしまえば、アメリカ自身が”用済み”になってしまうからです。(中略)「世界の安定にアメリカが必要」というレトリックが真に言わんとするところは、「世界の不安定がアメリカには必要」ということなのです。(中略)NATO日米安保は、ドイツや日本という「同盟国」を守るためのものではありません。アメリカの支配力を維持し、とくにドイツと日本という重要な「保護領」を維持するためなのです。P73-74

 ・そして何より問題なのは、ポーランドがここで分別ある行動を取る可能性が10分の1以下であることです。ポーランドは、ロシアに対する攻撃的態度に慣れすぎていて、そこから脱することができないからです。P106

 ・いかなる大国も、我慢がきかないものです。「とても感じのよい大国」など存在しないのです。ですから、均衡点を見つけて、大国と平和に共存することを学ばなければなりません。P108

 ・アメリカのシステムも内部崩壊していたということです。ソ連ほど目に見える形ではなかったとしても、共産主義との競争という圧力によって、アメリカのシステムも同じくらいに著しく崩壊していたのです。そして今日、アメリカに見られる思わしくない傾向というのは、我々が感知できていなかったこの内部崩壊の長期的影響なのです。P119-120

 ・共産主義というライバルは、アメリカに「黒人も人間として扱う」ことも強く迫りました。実際、1964年の公民権法に至るまで、アメリカの公民権運動は、ソ連と対峙する必要性を明らかに意識したものでした。そしてついにアメリカは自らの限界を越えてしまったのです。

 ここで、歴史人類学がアメリカの悲劇的な一面を明らかにします。「黒人は(白人より)劣る」という思想が禁じられることで、「平等」に関するアメリカのシステムは完全に調子が狂ってしまったのです。「黒人も平等」となれば「白人同士の平等」という感情は崩れ去ってしまうからです。こうしてアメリカでは、経済的な不平等の広がりが抑えられなくなり、社会保障制度は崩壊に至りました。 「黒人の解放」が「白人の集団感情」を打ち砕いたのです。P124

  ・アメリカでは、。識字率の向上によって形成された平等主義的な文化が、大学進学率の上昇によって、他国と同じように、ただしどの国よりも早く破壊されました。P125 

  ・「白人の平等」は”挟み撃ち”に遭ったと言えます。社会の上層部では、高等教育を受けた集団が形成されることで「白人の平等」が霧散し、社会の下層部では、黒人が市民としてなだれ込んできたことで「白人の平等」が浸食されたのです。P126

 

②に続く